2020.5.21
CBD(カンナビジオール )まとめ
目次
第1章 世界中で進む研究
第2章 主な機能
第3章 海外での動向
第4章 安全性と摂取方法
第5章 ECSを活性化
第6章 原料と成分
第7章 抽出方法
第8章 CBD用語集
第1章 世界中で進む研究
CBD(Cannabidiol)は、たくさんの疾患で研究が進んでいます。世界で最も使われている医学・生物学系の学術データベース「MEDLINE(メッドライン)」によると1000論文以上の研究が行われており、この中で動物やヒトの臨床試験を実施して論文になったものは約100疾患あります。それらの論文の信頼性(レベル)を評価したのが以下の疾患リストです。★印が3つ以上ものは研究結果レベルが高く、★印が2つ以下であっても、今後の研究に期待がかかっている疾患です。
注)CHIスコアとは、The Cannabis Health Index(2013)によるもので、効果のあった疾患リストではありません。 注)また、この疾患リストには、THCおよびCBDとの相乗効果を研究した論文も含まれています。
疾患名 研究数 CHIスコア
進行性がんに伴う痛み 2 ★★★★★
皮膚がん(非黒色腫) 2 ★★★★★
胃食道逆流症(GERD) 1 ★★★★★
不眠症 1 ★★★★★
神経障害-エイズ関連 2 ★★★★★
線維筋痛 3 ★★★★★
化学療法に伴う悪心・嘔吐(CINV) 24 ★★★★
嘔吐(合計) 27 ★★★★
糖尿病性潰瘍 1 ★★★★
皮膚炎/湿疹 1 ★★★★
統合失調症 4 ★★★★
全身性硬化症 1 ★★★★
創傷(手術後) 1 ★★★★
消化管の炎症性疾患(合計) 4 ★★★★
トゥレット症候群 10 ★★★★
脊髓損傷 5 ★★★★
咳 3 ★★★★
掻痒(かゆみ) 3 ★★★★
痛み(合計) 14 ★★★★
不安 4 ★★★
多発性硬化症(MS) 26 ★★★
パーキンソン病 4 ★★★
ぜんそく 7 ★★★
関節リウマチ 3 ★★★
偏頭痛 3 ★★★
肺疾患(合計) 12 ★★★
神経疾患(合計) 69 ★★★
がん誘起寝汗 1 ★★★
ヤコブ病 1 ★★★
膀胱炎(間質) 1 ★★★
HIV/AIDS 1 ★★★
夜間視力改善 1 ★★★
つわり 1 ★★★
神経障害 5 ★★★
脳腫瘍/神経膠腫/神経膠芽腫 9 ★★★
心臟病 7 ★★★
うつ病 8 ★★★
精神疾患(合計) 24 ★★★
神経保護特性 4 ★★★
皮膚疾患 4 ★★★
筋萎縮性側索硬化症(ALS) 7 ★★★
骨肉腫 3 ★★★
脳血管障害(CVS) 3 ★★★
炎症性腸疾患(IBS) 3 ★★★
肝炎 3 ★★★
炎症性疾患(合計) 17 ★★★
発作(てんかん) 5 ★★★
ウイルス感染症(合計) 12 ★★★
アルツハイマー病 4 ★★
食欲不振/惡液質 11 ★★
高血圧 2 ★★
子宮内膜症 2 ★★
多毛症 2 ★★
慢性非悪性の痛み 2 ★★
鎌状赤血球症 2 ★★
抜け毛/はげ 2 ★★
心臓血管の健康 12 ★★
アルコール依存/乱用 4 ★★
心的外傷後ストレス障害(PTSD) 3 ★★
せん妄 4 ★★
糖尿病 5 ★★
産科と婦人科(合計) 5 ★★
緑内障 9 ★★
ジストニア 5 ★★
ハンチントン病 5 ★★
エイジング/アンチエイジング 1 ★★
関節炎 3 ★★
アテローム性動脈硬化症 3 ★★
子宮頸がん 2 ★★
肝臓癌 2 ★★
膵癌 2 ★★
熱性発作 2 ★★
歯周炎 1 ★★
性欲 1 ★★
乗り物酔い 2 ★★
乳癌 6 ★★
がん(合計) 60 ★★
肺癌 4 ★★
骨粗しょう症 3 ★★
ヘルペス 3 ★★
双極性情動障害(BAD) 5 ★★
甲状腺がん 2 ★
慢性閉塞性肺疾患(COPD) 2 ★
膵炎 2 ★
月経痛 2 ★
白血病 5 ★
大腸癌(大腸) 3 ★
加齢黄斑変性(ARMD) 1 ★
細菌感染 1 ★
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA) 1 ★
メラノーマ(悪性皮膚がん) 1 ★
リンパ腫 2 ★
前立腺癌 3 ★
カポジ肉腫 2 ★
橫紋筋肉腫 2 ★
第2章 主な機能
CBDの働き
●発作を和らげるのをサポートする
● 強い抗酸化作用をもつ
● 炎症を減らす
● 細胞損傷を止めたり回復させたりする
● 不安を和らげる
● ある特定のガンに細胞死を誘発する
老人退行性疾患への有望性
・認知機能低下
・自己免疫疾患
・悪性腫瘍
・免疫機能低下
・アルツハイマー
・心臓疾患
・2型糖尿病
・腎臓疾患
老化に伴って身体調節機能を担うECS(エンド・カンナビノイド・システム)が不調となり、上記のような老人退行性疾患にかかりやすくなります。このシステムを再び円滑に動かすことができるのは外部から摂取するCBDが必要となります。
免疫システムのバランス
強いストレスを受けたり、身体の老化が進むと免疫バランスが崩れます。免疫は、過剰反応となっても、免疫が低下してもどちらも病気の原因となります。CBDは、ECS(エンド・カンナビノイド・システム)に働きかけて、これらのバランス調整に寄与すると考えられています。
免疫過剰反応
体内要因(自己免疫疾患 )
・橋本病
・リウマチ性関節炎
・狼瘡
・炎症性腸疾患
・I型糖尿病
体外要因 ( アレルギー反応 )
・食物アレルギー
・皮膚炎
・ぜんそく
・鼻炎
免疫低下
体内要因 (細胞変異)
・ 癌
体外要因 ( 感染症 )
・バクテリア
・細菌
・寄生虫
・ウイルス
・肝炎
・HIV
・帯状疱疹
・結核
免疫とは...?
免疫は、自分の体や組織を異物のように認識して、自己抗体や自己攻撃性リンパ球を作り、自分の体を攻撃することがあります。これが免疫システムの誤作動となり、標的となった組織で炎症反応を引き起こし、慢性関節リウマチや膠原病(こうげんびょう)など様々な自己免疫疾患を引き起こします。また、異物に対する免疫反応が過剰になったものがアレルギーです。これらの病態はいわば免疫システムの暴走状態と言えるのです。
第3章 海外での動向
アメリカでは、人道的な観点から医療用大麻を州レベルで合法化してきました。最初は20年前の1996年にカリフォルニア州から始まりました。今では、アメリカの33州 とワシントンDCが医療用大麻を合法化しています。また、嗜好用大麻を合法化してお 酒やタバコと同じように課税して管理するかも10 あります。THC含有が0.3%未満である産業用大麻由来のCBDは、50州すべてで合法です。しかし、アメリカの連邦政府は、マリファナ禁止の政策を取り続けています。そのため、CBDは、マリファナの主成分であるTHCと同じスケジュールIという非常に厳しい規制があって、医薬品として 使えません。そのため、民間サイドで住民投票という手段を使って、州レベルの政策を 変えてきた歴史があります。CBDだけを合法化している州も13州もあります。
精神作用のないCBDが注目を浴びるようになったのは2013年夏。重症のてんかんを患う少女がCBDの摂取により、それまで週300回あった発作が、週1回程度 にまで減少しました。その事実を全米でCNNの医療番組が取り上げたことをきっかけに、CBDが一気に有名となり、今では数多くの会社がCBDを含めた医療用・嗜好用 大麻のビジネスに参入して、様々な商品が販売されています。しかし、連邦政府の規 制があるため、法律上は食品として扱われます。現在は、1.0兆円市場規模ですが、 2022年には、医療用2.5兆円産業、嗜好用と合わせて合計で5.3兆円産業になると 言われています。
第4章 安全性と摂取方法
マリファナ成分“THC”がもつ精神作用は、CBDにはありません。CBDは、マリファナの主成分であるTHCが作用するカンナビノイド受容体“CB1”を ブロックするため、THCの“ハイ”な感じを抑制することができます。また、CBD単体であっても、精神作用はありません。 CBDの安全性は様々な論文で確認されています 。CBDに関する132論文の副作用レビュー(下記の表参照)では、動物とヒトに対し て安全性が高いという評価を受けています。
毒性&評価
・細胞毒性 ⇒ ない
・食物摂取 ⇒ 変化を誘発しない
・カタレプシー(強硬症) ⇒ ない
・生理学的パラメーター(心拍数、血圧、体温) ⇒ 影響なし
・消化管通過 ⇒ 影響なし
・精神運動・心理的機能 ⇒ 影響なし
・高濃度1500mg/日/ヒトの投与 ⇒ 耐えられる
・肝臓薬物代謝の抑制(ラット) ⇒ 影響あり
・受精能力減少(ウニ) ⇒ 影響あり
・P糖タンパク質活性減少(ラット) ⇒ 影響あり
Safety and Side Effects of Cannabidiol, a Cannabis sativa Constituent (2011)
WHO (世界保健機関) においてCBDは麻薬指定の対象外です。WHOでは2018年6月にCBDの安全性が評価され、国際薬物条約 における麻薬に該当しないことを勧告しています。
CBDの摂取・使用方法
(1) オイルとして飲む・食べる
CBDオイルは一般的に、舌の裏側に数滴ほど垂らし て、30秒間ほど口の中に含ませてそのまま飲む方法が 用いられます。パン、サラダ、お菓子に付けて食べたりも します。
(2)クリームとして塗る
CBDクリームを指にとり、皮膚の上からうすく伸ばして 塗ります。
(3)ベポライザーを使う
海外では、喫煙時の煙の害を避けるために、CBDを気化させて摂取する器具 (ベポライザー)が使われています。
(4)スモークする
海外では、医療用大麻の一般的な摂取方法で、いわゆるタバコと同じように喫煙します。
第5章 ECSを活性化
体内には、地球上で生きていくために本来備わっている身体調節機能=ECS(エンド・カンナビノイド・システム)があります。ECSは、食欲、痛み、免疫調整、感情抑制、運動機能、発達と老化、神経保護、認知と記憶などの機能をもち、細胞同士のコミュ ニケーション活動を支えています。ECSは、1990年代に発見された“アナンダミド”と“2-AG”と呼ばれる体内カンナビノイドとそれらと結合する神経細胞上に多いカンナビノイド受容体CB1、免疫細胞上に多いカンナビイド受容体CB2などで構成され、全身に分布しています。最近の研究では、ECSは、外部からの強いストレスを受けたり、加齢に伴う老化によって、ECSの働きが弱り、いわゆる「カンナビノイド欠乏症」になると、様々な疾患になることが明らかになってきました。CBDは、これらの全身にある受容体に直接的に働きかけることで、本来のECSの働きを取り戻すことができるのです。
全身のあちこちにある カンナビノイド受容体
●脳・中枢神経系・脊髄(CB1)
● 皮質領(CB1):大脳新皮質・梨状皮質・海馬・扁桃体
● 小脳(CB1)
● 脳幹(CB1)
● 大脳基底核(CB1):淡蒼球・黒質・網様部 嗅球(CB1)
● 視床下部(CB1): 内分泌線
● 下垂体(CB1)
● 眼(CB1・CB2): 網膜色素上皮細胞
● 甲状腺(CB1)
● 上気道(CB1)
● 心臓(CB1・CB2)
● 胃(CB1・CB2)
● 膵臓(CB1・CB2)
● 消化管(CB1・CB2)
● 肝臓(CB1):クッバー細 胞・肝細胞・肝星細胞
● 腎臓(CB1)
● 卵巣(CB1):生殖腺
● 子宮(CB1):子宮筋層
● 前立腺(CB1):上皮細胞・平滑筋細胞
● 精巣(CB1): 生殖腺・ライディッヒ細胞・精細胞
● 骨(CB1・CB2)
● 皮膚
● 角化細胞(CB2)
● リンパ系・免疫系システム
● 脾臓(CB2)
● 胸腺(CB2)
● 扁桃腺(CB2)
● 血液(CB2)
● リンパ球
第6章 原料と成分
アサ科1年草の薬用植物「アサ(Cannabis sativa L.)」には、“カンナビノイド ” と呼ばれる生理活性物質が含まれています。カンナビノイドは、炭素数21の化合物で、104種類あります。その中で、よく知られているのは、マリファナの主成分で有名なTHC(テトラ・ヒドロ・カンナビノール)と精神作用のないCBDです。CBDは、1963年にイスラエルの化学者メクラム氏によって発見され、ポリフェノール構造をもちます。THC濃度が0.3%未満の産業用大麻と呼ばれているアサの品種にCBDは、1~15%ほど含まれています。
Cannabidiol (CBD) カンナビジオール
CAS番号 : 13956-29-1
分 子 式 : C21H8002
分 子 量 : 314.462
融 点 : 66℃
沸 点 : 180℃
油 溶 性 : (logP:6.6)
日本では、1948年に制定した大麻取締法によって、カンナビノイドを多く含む花穂と葉の利用を禁止しています。
大麻取締法
第一条この法律で「大麻」とは、大麻草(Cannabis sativa L.)及びその製品をいう。ただし、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く)並びに大麻草の種子及びその製品を除く。
非合法な部位
穂
・医薬品
・嗜好品
葉
・医薬品
・肥料
・飼料
根
土壌改良
合法な部位
種
・食品
・食用油
・化粧品
・石鹸
茎(靭皮部・繊維)
・糸
・ロープ
・織物
・神道儀式
木質部(オガラ)
・燃料
・紙
・建材
・プラスチック
現行法では、茎および種子由来のCBDであれば利用することができます。
第7章 抽出方法
原料となるアサから有効成分CBDを抽出する方法は、 以下の3つがあり、それぞれ一長一短 があります。
①キャリアオイル抽出
②エタノールなどの溶媒抽出
➂CO2(二酸化炭素)抽出
①キャリアオイル抽出
CBDは油に溶けやすい性質があるので、それを利用した抽出法です。 主にオリーブオイルが使われます。長所は、気楽に誰でもできる点と、短所は抽出液の 保管期間が短いこと、オイルの価格が高いことです。
②エタノールなどの溶媒抽出
海外の医療用大麻が利用されている地域では、最も一般的に行われている方法です。溶媒はイソプロピル・アルコール、ヘキサン、アセトン、穀物アルコール(95%エタノールのスピリタス)です。長所は、簡単な設備で家庭の台所でもできる点で、短所は、残留溶媒があること、植物エキスの一部が分解することです。
➂CO2(二酸化炭素)抽出
CO2抽出とは、温度31.1°C以上、圧力7.38MPa(メガパスカル)以上にした超臨 界状態(気体と液体の両方の性質をもつ)または、この条件よりもやや低い温度と圧 力の亜臨界状態で、植物エキスを抽出する方法です。長所は、残留溶媒の心配がな く、植物エキスを壊すことなく、まるごと抽出できることで、短所は、設備の初期投資が かかるので気楽にできないことです。
第8章 CBD用語集
【大麻、麻、大麻草、マリファナ、ヘンプ、カンナビス】
すべて同じ植物「アサ」のことを指します。アサ科の1年草。 学名:Cannabis sativa L. (カンナビス・サティバ・エル)
【産業用大麻 Industrial hemp】
種子や繊維を採る目的で栽培されています。 THC成分が0.3%未満の品種。ヘンプ(Hemp)とも呼ばれます。
【ヘンプシード・オイル(アサ種子油) Hemp seed oil】
アサの種子から取れる油。略して「ヘンプオイル」と呼ばれています。
【カンナビス・オイル Cannabis oil】
アサの花穂の有効成分を抽出したものです。
【CBDオイル CBD(Cannabidiol) oil】
CBD(カンナビジオール)を主成分にした抽出液のことです。 原料部位は花、葉、茎&種子を使います。現行法上、日本では茎と種子由来のものに限定されます。
【医療用大麻=マリファナ(嗜好) Medical marijuana】
医療用というと特別なものと思われがちですが、医療用も嗜好用も同じアサの有効成 分を活用します。目的が違うだけです。
【THC(テトラ・ヒドロ・カンナビノール) Tetrahydrocannabinol】
マリファナの主成分で、精神作用をもたらす。いわゆる“ハイ”になります。
【カンナビノイド医薬品 Cannabinoid drugs】
カンナビノイドを使った医薬品のことです。
植物由来(例)
・サティベックス(Sativex) 多発性硬化症の痛み改善薬
・エピディオレックス(Epidiorex) 抗てんかん薬
化学合成(例)
・マリノール、ナビロン(制吐剤、鎮痛剤)
【植物性カンナビノイド Phytocannabinoid】
カンナビノイドとは122種類あるアサに含まれる生理活性物質の総称です。 合成や内因性と区別するために“植物性”を付けることがあります。
【合成カンナビノイド Synthetic cannabinoid】
化学的に合成されたカンナビノイド。植物性よりも危険性が数倍~数十倍も大きく 社会問題になったため、類似する722物質が指定薬物として規制されています。 いわゆる“危険ドラッグ”の一種です。
【内因性カンナビノイド Endocannabinoid】
体内で合成されるカンナビノイド。アナンダミド、2-AGなど10種類ぐらいあります。これ らと作用するところが“カンナビノイド受容体”です。この内因性の複雑な働きをまとめ てECS(エンド・カンナビノイド・システム)と呼んでいます。
【受容体 Receptor】
外からの刺激や情報を得るための構造をもつタンパク質。レセプターとも呼ばれる。 カンナビノイド受容体は、神経細胞上に多いCB1と免疫細胞上に多いCB2の2つが 代表的です。
日本臨床カンナビノイド学会編「カンナビノイドの科学 一大麻の産業・医療・福祉利用一」築地書館 (2015年10月発売) より一部引用。